事業開発

入社1年目の挑戦!セルフ写真館事業~前編~

近年、若者を中心に話題となっている「セルフ写真館」。原宿や渋谷等、都心の繁華街から店舗が拡大していき、現在では全国各地でも利用できるサービスとなっています。
2022年3月21日、総合開発本部が手掛ける新規事業の1つとして”make everyday an anniversary -毎日を記念日に”をコンセプトとした「セルフ写真館Chughahae」を鶴橋と名古屋に開業しました。
本コラムでは「セルフ写真館Chughahae」オープンまでの道のりや試行錯誤の日々を、前編/後編の2回に分けてご紹介していきます。

【セルフ写真館とは】
 韓国発の”カメラマンのいない”写真スタジオ。本格的なフォトスタジオ機材を使いながら、人目を気にせず自分らしく、また自分の好きなタイミングでシャッターを切って撮影ができる仕組み。盛りすぎず、ナチュラルな素の瞬間をおさめることができる点で、学生やカップルを中心に話題になり、ニュースポットとして人気に火がつきました。

 

~入社1年目の挑戦~

 入社して間もなく新規事業開発を担う総合開発本部の配属に。初めは「そもそも事業を開発するってどうすればいいのか…?」の状態で、右も左も分からない中、ひたすらにアイデアを探していました。

 企画の始まりは10月頃、新規事業アイデアがなかなかまとまらない中、チームブレストの際にたまたま雑談でセルフ写真館の話をしたことがきっかけでした。当時じわじわSNSでセルフ写真館の投稿が見られるようになり、個人的に気になっていたサービスでした。
 日本のプリクラに比べて、かなり自然な仕上がりで撮影できる韓国プリクラや証明写真機でプリクラのような撮影をするムーブメント等、あえて盛れない写真やがっつりカメラを意識していないような自然な撮られ方がトレンドとなり、俗にいう”エモい”写真がSNSにあふれるように。こうした「加工からの脱却」がセルフ写真館のブームを後押していていました。
 まさかセルフ写真館を事業化していくことになるとは思わず、軽い気持ちで口にした話題でしたが、周囲の反応はかなり意外なものでした。そもそも”セルフ写真館”って知らなかった、面白そう、しっかりコンセプトを詰めれば提案できそう等…多くの方から前向きな意見をもらい、入社して初めての新規事業化への挑戦を決意しました。

部内で検討を進めていく中で事業化の決め手となったポイントは大きく3つ

  1. Z世代マーケティング×トレンドであり消費が見込める韓国カルチャー
  2. 国内では当時まだブルーオーシャン
  3. 省人化した運営体制によりランニングコストが抑えられる

企画当時、大阪でのセルフ写真館店舗は梅田や心斎橋の繁華街エリアを合わせてみても10店舗程度、エリア浸透はまだまだの状態。
そこで目をつけたエリアが近鉄沿線かつ韓国カルチャーの中心”生野コリアタウン”の玄関口「鶴橋」でした。10代~20代前半ほどの若い女性やその母親世代で連日にぎわい、通りがふさがるほど超人気のスポット。見渡すとk-popアイドルグッズやコスメのショップ、カフェが多く立ち並び、店内にフォトスポットを設ける店舗や韓国プリクラの導入、韓国制服の貸し出しを行う店も。エリア全体に、「空間に滞在し写真を撮り拡散したくなる仕掛け」が見えてきました。推しのグッズと写真を撮り、ショッピングを楽しみ、カフェで休憩を兼ねておしゃれな写真を撮る。こうしたカスタマージャーニーを見ても、周りを気にせず好きな写真を好きなだけ撮影できる「セルフ写真館」というサービスは、エリア特性とも相性が良さそうだと判断しました。
また、他のセルフ写真館との差別化として「利用シーン」に着目。単に「フォトスタジオよりは気軽な撮影」に留まってしまうと陳腐化と低価格競争化が危惧されたため、以下を意識して体験設計を行っていきました。

  • k-popアイドルのセンイルフォト(華やかな装飾が特徴のバースデーフォト)をモチーフにしたサービス設計
  • 韓国カフェ風インテリアで作る”滞在すること自体も楽しい”空間
  • モノクロの世界観ではなく、装飾と自分が映えるカラフルな世界観

 上記のコンセプト周りだけでなく、価格設定も重要な要素でした。メインターゲットである10代~20代前半の女性が、プリクラ以上フォトスタジオ未満のサービスとして利用しやすい価格帯を考慮していく必要があります。この店舗では撮影時間の1枠分の料金は2名まで追加料金なし、3名以上からは、人数追加する毎に一人当たりの単価がオトクになるように設計しました。また、撮影したデータは、何枚であっても全データ当日お渡し。セルフ写真館だからこその体験価値はどう磨くか?という点を、徹底的に議論していきました。

~部署メンバー総力戦で店づくり~

 入社して約8ヵ月、社内の常務会で初めて自分の事業案を1からプレゼンしました。当社事業としてのtoC分野は初の試みのため、会議でも多くの意見がありました。移り変わりの激しいトレンド市場を相手に、本当に価値のあるサービス提供ができるのか。収支計画の改善、店舗運営体制の見直し…。それでも、チームで熱意をもって企画を通すために取り組めたのは、プレゼンを聞いた上司全員がまずは自分を信じてくれているという実感と後ろ向きの意見ではなく実現に向けた議論をしてくれたからでした。
 企画が通り、本格的に開業に向けた準備がスタートしたのは2022年1月下旬。同時に名古屋の近鉄パッセでも開業が決定しました。ようやく企画が通りほっとするのも束の間、1つのミッションが課されました。それが「年度内3月中にオープン」すること。自分自身としても、自社事業としても、店舗を立ち上げることはもちろん初めての試みでしたが、開店準備にかけられるのは、泣いても笑っても残り約2ヵ月。かなりタイトなスケジュールで進めていくことになりました。
 時間に追われながらもタスクは山積みでした。店舗物件探しとリノベーション、インテリアコーディネート、ロゴやキービジュアルのデザインと作成、店舗アルバイトスタッフ雇用、公式SNSの運営等…実際これらほぼ全ての業務は部内での人力によってで完結させていきました。入社して、まさか壁の張替えや床材の設置など…こんなにがっつりDIYすることになるとは思ってませんでしたが。(笑)
 広告代理店の社員として、あれほど多くの先輩社員の方々に支えていただきながらお店を1から作り上げたあの時間は、私の人生でたった一度の一生忘れることのできない大変貴重な経験でした。

総合開発本部メンバーでのリノベーション作業

ハード面の整備とほぼ同時進行で店舗スタッフの募集と採用も開始したことで、オープン後の店舗運営についてもより詳細な計画を立てていきました。お客様が来店してから退店するまでの接客シミュレーション、機材の利用方法、スタッフ勤務中のリスクも鑑みた対策等…あらゆるパターンを想定して一からマニュアルを作成。他にも事前PRの開始に向けたキービジュアルの撮影、デザインと制作、SNS戦略など…限られた時間と人員でオープンに向けてひたすら動き続けました。

そして、2022年3月21日に鶴橋の店舗をオープン!
企画の始まりからは約半年、広告代理店の新規事業としてどんな価値を提供できるのか、どうすればお客様に足を運んでいただけるか、ご来店いただいたお客様にはどういうサービスを提供すれば気持ちよく利用していただけるか…考え続けた日々でした。

後編では、ついに開業したセルフ写真館での試行錯誤や施策をご紹介していきます。ぜひご覧ください!